14,000人を送り出した国家プロジェクトが、「聞けなかった声」に手を伸ばすまで

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荒畦 悟

文部科学省 トビタテ!留学JAPAN

プロジェクトディレクター


年間1,000人超を送り出す事務局は、30名程しかいない

「トビタテ!留学JAPANは、2013年に文科省主催でスタートした、留学機運を高めていくプロジェクトです。官民協働という形で、国だけではできなかった新しいグローバル人材育成を実現できている。年間1,000人を超える若者をこの10年近く送り出して、累計で今14,000人ぐらいを海外に送り出してきました」

そう語るのは、プログラムの立ち上げ期から関わり、現在プロジェクトディレクターを務める荒畦 悟氏。大学生・大学院生だけでなく高校生まで、47都道府県から多様な若者を送り出してきた、国内でも有数の大規模な留学支援プロジェクトだ。

しかし、その規模こそが課題だった。

「全体としてどういうニーズや課題があるのかを捉えるのが、なかなか難しい。事務局は30名ぐらいですので、接点があるステークホルダーにそれぞれ数人ずつ意見を聞いて、それで何となくの課題感やニーズを捉えているというのが現状でした」

 

9,000人支援したプログラムを、数人の意見では変えられない

課題が最も切実になったのは、プログラムの大改編のタイミングだった。

「2014年から22年までが第一ステージで、いまは第二ステージ。移行にあたってプログラムを改編しましょうとなったとき、それまで9,000人近く支援してきたプログラムを、数人の意見だけで変えるというのは難しい。アンケートは『賛成ですか、反対ですか』という浅いものになりがちで、深いインサイトがつかめない。インタビューも何人かにはしましたが、人数的に限界があって。何とか数十人に聞いて改善につなげましたが、もっと幅広く捉えられていれば、もっと変えられたところがあったのではという直感がありました」

さらに荒畦氏には、もうひとつの構想があった。

「これだけ多様な経験をした14,000人近い若者がいて、とてつもない知恵がそこにあるはずなんです。その知恵を可視化して、社会に発信するなり、支援企業に還元するなり、そういうことができないか。でも数名ずつ集めて意見を聞くやり方では、大きな人数の知恵の可視化は、やりたくてもできませんでした」




 

進路調査の「その先」で、Kikuviと出会った

転機は昨年末。プロジェクト10年の節目に実施した、大規模な進路調査だった。

「定量的なデータは取れた。でも、もう少し深掘りした定性的な情報も取っていきたい。フリーアンサーでは、一つの質問に対して一往復の回答になってしまう。もっと深い回答を取れるようなインタビューがしたい。ただ、それはなかなか現実的ではない。そんな中でKikuviさんと出会って、数多くの人たちにヒアリングができるということで、進路調査の延長線上で活用させていただきました」

実はこの出会いには伏線がある。Kikuvi代表の佐藤拳斗自身が、トビタテから海外へ飛び立ったトビタテ生の起業家なのだ。プログラムが送り出した卒業生が、今度はプログラムの進化を支える側に回った。

テーマに選んだのは、いまトビタテが直面する重点課題である、高校生留学の拡大だ。

「その中でも地方、そして理系分野の高校生の留学に課題がある。でもその層に数多くヒアリングをすることが難しかった。今回、地方プラス理系分野の人たちに100名近く、Kikuviでヒアリングをさせていただきました」




 

100名の声から見えた、「ロールモデル」と「先生」

100名規模のヒアリングは、これまで手の届かなかった解像度で実態を映し出した。

「地方でも国際的な学校に所属している人たちには、それなりに機会がある。一方で、情報やロールモデルが少なくて難しいという実態があった。理系の子は理系の子で、文系の海外に興味がある子たちとは全然違う環境で、情報の取り方も違うことが見えてきました」

「理系の子は先生との関係が近いのかな、というのもヒアリング結果から見えてきた。地方の子に情報を届けるには何経由がいいのか、理系の子には先生経由で届けるとより届くんじゃないか。そういうことが見えてきました」

得られた示唆は、次の募集設計やコース設計に直結していく。

 

異業種が集まったチームに、「共通の知恵」という土台ができた

もうひとつ、荒畦氏が意外な価値として挙げたのが、事務局運営そのものへの効果だ。

「この事務局は官民協働で集まった、異業種が集まったチームです。異動で来た人たちは基本的に1〜2年でいなくなってしまう。チームビルディングや知恵の共有がすごく難しいんです。以前は『地方の高校生の実態はこうなっている』ということが、古株の人の頭の中にあって、それを共有することで前提を揃えていた。いまは議論のベースになる素材が、これだけの人数の知恵としてある。信頼性も納得度も高いデータをベースに議論ができるのは大きいですし、それをベースに新しい人たちが知恵を出せるようになります」

 

信頼性も納得度も高いデータをベースに、異業種が集まったチームが議論できる。それは非常に大きな価値です

 

トビタテコミュニティの知恵を、文科省の施策へ、支援企業へ

今後の展望は、プログラム改善のさらに先へと広がっている。

「例えば、いま大学院に進む学生を増やしたいという教育課題があります。トビタテで海外の大学院に留学している人たちにヒアリングをして、なぜ日本の大学院に行かないのか、日本と海外の大学院に行った人たちの声を集めて比較する。そういう形で、文科省の施策の中にデータとして提供できる可能性もある。トビタテのデータや知恵が、留学制度だけでなく文科省の施策に生かされて、さらには支援企業にも広がるといいなと思っています」

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Kikuvi Inc. の情報セキュリティマネジメントシステム / ISO/IEC 27001:2022(適用宣言書は ISO/IEC 27017:2015 に整合)/ 認証機関 Prescient Security

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